カムランドによる地球ニュートリノ観測最新結果

: 地球のトリウム/ウラン重量存在比への制限

Preliminary
 

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(結果の解説)

 ニュートリノの素粒子としての性質が徐々に明らかになり、その高い透過性を利用し不可視の天体内部を観測する手段として用いることが現実のものになっている。地球内に分布する放射性物質の崩壊時に放出される反ニュートリノ (地球反ニュートリノ) の観測により、地球内部の熱生成や放射性物質量を直接観測するという新分野「ニュートリノ地球物理」は、2005年に世界初観測結果を発表したカムランドによって牽引されてきた。

 カムランドでは、液体シンチレーターの純化によって放射性物質を除去した積極的なバックグラウンドの低減に加え、近年の稼働原子炉数の低下により主要なバックグラウンドの原子炉反ニュートリノが通常時の約20分の1に減少し、地球反ニュートリノの観測精度が向上した。 図1は本予備結果の全データの約3分の1に当たる原子炉停止期間のエネルギースペクトルであり、地球反ニュートリノに由来する明らかな分布を観測した。 これまでに蓄積した3901日分のデータの解析により164+28-25の地球反ニュートリノを観測し、この17%の不定性での観測は地球モデルの不定性20%を下回る初めての結果である。更に、エネルギー分布からウラン・トリウム由来の各反ニュートリノの寄与を見積もる事により、全地球のトリウム/ウラン重量存在比について、Th/U=4.1+5.5-3.3という結果を与えた (図2)。この結果は、地球を形成した原始物質に近い隕石組成の分析に基づく地球の平均化学組成モデル (BSE (bulk silicate Earth) モデル) の示唆するTh/U = 3.58~4.2、様々な隕石組成の分析結果であるTh/U = 1.06~6.42の、間接的知見のどちらとも矛盾しない。今回の予備結果により、地球反ニュートリノ観測という全く異なる手法による直接的観測で、地球科学に新たな観測量を示すことに成功した。今後は、高精度データの蓄積に加え、日本近郊の地震波観測や放射性物質分布等の地球科学的知見を組み合わせた地球反ニュートリノフラックスモデルの高信頼度・高精度化を行うことで、マントルの一様性といった更に詳細な地球内部の解明への貢献が期待出来る。

  1. 発表資料 PDF

2016年10月25日-27日に東北大学で開催された国際ワークショップ「Neutrino Research and Thermal Evolution of the Earth」において予備結果として発表