(論文解説)

 太陽内部に存在する8Bの放射性崩壊で作られるニュートリノは、エネルギーの高い太陽ニュートリノの主要な成分を占めており、太陽ニュートリノ実験における重要な観測対象である。実際、スーパーカミオカンデ実験やSNO実験での8Bニュートリノ測定は、カムランド実験での原子炉反ニュートリノ測定とともに、MSW物質効果を伴う大混合角(LMA)ニュートリノ振動解を確立するのに重大な貢献をした。スーパーカミオカンデとSNOは、水チェレンコフ光を利用した検出器であるが、カムランドのような液体シンチレータを用いた検出器では光量が2桁程度大きいおかげで、さらに低いエネルギーでの測定が可能となる。今回、カムランド実験では123キロトン・日のデータを用いた解析を行った。エネルギーしきい値は、液体シンチレータ内部に含まれる208Tlからのバックグラウンドによって制限され、観測エネルギーで5.5 MeV以上としている。その結果、8Bニュートリノのフラックスは2.77 ± 0.26(stat) ± 0.32(syst) × 106 個/cm2/秒と見積もられた(stat,systは統計誤差と系統誤差を表す)。カムランドで測定された8Bニュートリノのフラックスは、他の実験での測定やニュートリノ振動を考慮した標準太陽モデルの予測と一致する。今後、バックグラウンド源である208Tlを除去することでより低エネルギーでの測定(~3 MeV)され、より詳細な太陽ニュートリノ振動の検証ができると期待される。

カムランドによる8B太陽ニュートリノの測定

フィジカル・レビュー・C 84巻 035804(2011年投稿)

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