(論文解説)

 ニュートリノを伴わない2重ベータ崩壊の探索は、ニュートリノのマヨラナ性を証明する最も優れた手法として注目されている。現在、ほとんどの実験では軽いマヨラナニュートリノの交換によって起こる崩壊モードの探索を推し進めているが、これ以外の過程による崩壊モードも同時に寄与する可能性がある。その一つが、マヨロンと呼ばれる南部−ゴールドストンボソンを放出する過程であり、崩壊で放出される電子のエネルギースペクトルを比較することによって他の過程との区別が可能である。 カムランド禅実験では、最初の結果からさらに統計量を増やした112日のデータを用いて、キセノン同位体(136Xe)の崩壊測定を行った。 その結果、図のようなエネルギースペクトルが得られ、ニュートリノを伴う2ν2重ベータ崩壊の半減期は 2.30 ± 0.02(stat) ± 0.12(syst) × 1021 年(stat,systは統計誤差と系統誤差を表す)、 ニュートリノの放出を伴わない0ν2重ベータ崩壊の半減期は90%の信頼度で 6.2 × 1024 年以上、標準的なマヨロンの放出を伴う0ν2重ベータ崩壊においては 2.6 × 1024 年以上と見積もられた。マヨロン放出による崩壊の半減期は、原子核のモデルを仮定するとマヨロンとニュートリノの結合定数に変換することができるが、今回のカムランド禅の結果は結合定数に対してこれまでの2重ベータ崩壊実験で最も厳しい上限を与える。1987年の超新星ニュートリノ観測による制限と組み合わせるとさらに厳しい上限が与えられ、0.02 電子ボルト以上の軽いマヨラナニュートリノの交換による2重ベータ崩壊の探索においてはマヨロン放出モードの寄与は小さいことが分かった。

カムランド禅実験における136Xeのマヨロン放出による2重ベータ崩壊に対する制限

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フィジカル・レビュー・C 86巻 021601(R)(2012年掲載)