(論文解説)

 ニュートリノを伴わない0ν2重ベータ崩壊の探索は、ニュートリノのマヨラナ性を検証するための唯一の現実的な方法であるため、世界中で様々な原子核を用いた大型実験が計画されている。これまでの実験では、76Geを用いたハイデルベルグ・モスクワ実験の一部のメンバーのみが 0ν 2重ベータ崩壊を検出したという主張をしているが、環境放射線に由来するバックグラウンド評価に問題があるとの指摘もあり未だにはっきりとした結論が得られていない。このため、他の原子核あるいは別の手法を用いた0ν 2重ベータ崩壊実験による検証が望まれていた。今回カムランド禅実験では、最初の結果からさらに統計量を3.2倍に増やすことで高感度な136Xeの0ν 2重ベータ崩壊探索を実現し、初めて76Geにおける検出主張を検証することが可能となった。 カムランド禅の結果から、136Xeの0ν2重ベータ崩壊の半減期は90%の信頼度で 1.9 × 1025 年以上、他の136Xe実験の結果と組み合わせると 3.4 × 1025 年以上という制限が得られた。 これは、ニュートリノ質量に対して0.12〜0.25 電子ボルト程度の上限値が得られたことに相当する。図は76Geと136Xeの半減期の測定を比較したものであり、軽いマヨラナニュートリノの交換による0ν2重ベータ崩壊を仮定した場合、どの原子核モデルに対しても136Xeにおける半減期の制限によって76Geにおける検出主張を97.5%以上の信頼度で否定できることを示す。この136Xeの結果は、76Ge以外の原子核を用いた0ν2重ベータ崩壊の探索感度がついに未検証のニュートリノ質量領域に到達したことを示すものであり、今後検出器を改良することでさらに微小なニュートリノ質量の検証が実現できると期待されている。

2012年投稿

カムランド禅の第1フェーズ実験による136Xeのニュートリノを伴わない2重ベータ崩壊に対する制限と76Geにおける検出主張の検証

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