(論文解説)

二重ベータ崩壊には素粒子物理の標準理論で説明できるニュートリノを放出する(2ν)モードとニュートリノを放出しない(0ν)モードがある。0ν二重ベータ崩壊の検出に成功すれば、粒子と反粒子との間に区別がないニュートリノ特有の性質(マヨラナ性)を証明したことになり、さらにその崩壊率からニュートリノの質量が決定できると期待されている。このため、ニュートリノ質量は0ν二重ベータ崩壊探索における重要な指標であるが、二重ベータ崩壊には核行列要素の計算における理論的な不定性があるため、質量による探索の感度予測に大きな誤差を生じている。このような理論モデルの改良には始状態・重状態が0νモードと共通の2νモードの二重ベータ崩壊を詳しく調べることが有用である。カムランド禅では2ν二重ベータ崩壊で放出される電子のエネルギースペクトルを大統計量で観測したことで、理論モデルが予測する微小なスペクトルの歪みまでを測定することが可能となった。その結果、図に示すようにクエンチング(gAeff)と呼ばれる核行列要素の計算における不定性に対する制限を与えることに成功し、二重ベータ崩壊に対する新しい知見を得ることができた。


フィジカル・レビュー・レターズ 122巻 192501

カムランド禅による136Xeの2ニュートリノ二重ベータ崩壊スペクトルの精密解析と核行列要素のクエンチングに対する制限

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