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KamLANDの紹介

KamLAND~カムランド~ The Kamioka Liquid-scintillator Anti-Neutrino Detector

カムランドでは大きく分けて4つの研究をしています。

  • 原子炉ニュートリノによるニュートリノの性質解明
  • ニュートリノ地球物理の創出
  • ニュートリノ天文学の推進
  • ニュートリノを伴わない二重β崩壊の探索

これらの研究を通じ、「物質の起源」を解明し、重力·電磁力などの 「力の統一」を読み解くことで、宇宙の始まり未来探求していくことが出来ます。

教授:井上邦雄

物質を構成する素粒子は、クォークとレプトンに分類されます。クォークは陽子・中性子などを構成する素粒子であり、6種類あることが知られています。クォークは自然界で知られている4つの力(電磁力、弱い力、強い力、重力)をすべて受けます。レプトンはクォークに対し強い力を受けない素粒子で、クォークと同じく6種類あります。そのうち3種類は電荷を持った電子・ミュー粒子・タウ粒子で、残りは電子ニュートリノ・ミューニュートリノ・タウニュートリノの3種類あります。ニュートリノは電荷を持たないため電磁力も受けません。また、ニュートリノは非常に軽く、ニュートリノ以外で最も軽い電子と比べても10万分の1以下の質量しかありません。一方、宇宙全体で素粒子の存在数を平均すると、ニュートリノが1立方センチメートルあたり約300個存在するのに対し、他の素粒子は1億分の1個程度しか存在しません。宇宙に桁違いに多く存在するニュートリノの性質は、素粒子大統一理論の構築や宇宙の成り立ちを解明する上で非常に重要な意味を持っています。また、太陽や地球などの天体は大量のニュートリノを放出しており、太陽ニュートリノに至っては1平方センチメートルあたり1秒あたり660億個のものニュートリノが地球に到達しますが、ニュートリノは強い力も電磁力も受けないため、そのほぼ全てが痕跡も残さずにすり抜けています。ニュートリノの透過性の高さは観測を困難にしますが、その反面通常は見透かすことができないような天体内部からも有用な情報を直接もたらしてくれます。 このようなニュートリノを捕らえるため、宇宙線の影響の少ない地下深くに巨大で極低放射能の実験装置カムランドが建設されました。カムランドは、1000トンの液体シンチレータを蓄え、素粒子反応によって生じる微弱なシンチレーション光を、球形タンク内に張り巡らした1879本の高感度光センサーで捕らえます。カムランドの液体シンチレータは、通常の物質と比べて1兆分の1程度しか放射性不純物を含んでおらず、希な現象の研究に適した極低放射能環境を実現しています。

原子炉ニュートリノによるニュートリノ振動の精密測定

カムランドが最初に目指したことは、「太陽ニュートリノ問題」の解明です。太陽は中心部での核融合反応をエネルギー源にして輝いていますが、中心部の様子を見透かすことができないので、同時に放出されているニュートリノ観測することで核融合反応の状況を調べようとする実験が1960年代に行われました。ところが、太陽の明るさから予測する3分の1程度のニュートリノしか観測されず、その後の太陽ニュートリノ観測実験によっても追認されていきました。30年以上未解決だったこの問題の解明には、発生量がしっかりと理解できている人工のニュートリノ源が適しています。カムランドを設置した飛騨市は、世界最強の柏崎刈羽の原子力発電所や、若狭湾の原子炉群などから平均して180km程度離れたところに位置します。太陽が核融合反応を通じて電子ニュートリノを生成するのに対し、原子炉は核分裂反応によってその反粒子である反電子ニュートリノを生成します。各原子炉の運転履歴から反電子ニュートリノの生成量は正確に計算できることから、180kmの距離を反電子ニュートリノがどのように伝搬するかを調べることができます。 実は、ニュートリノには種類を繰り返し変化させながら伝搬するニュートリノ振動という現象があります。素粒子の混合というものはクォークでも知られていますが、ニュートリノにはそれよりずっと大きな混合がみられます。ニュートリノは非常に軽いですが質量を有しています。3種類の質量のニュートリノがあることがわかっており、これらが混合して3種類のフレーバー(香り)の電子・ミュー・タウニュートリノが構成されています。これは、ニュートリノが複合粒子であるという意味ではなく、異なる状態の量子力学的な重ね合わせであることを意味しています。そして、量子力学的には、重いニュートリノは速い周期の波で、軽いニュートリノは遅い周期の波です。これらの周期の異なる波が重ね合わされることで、波のうなりに応じてニュートリノが種類を変えることから、ニュートリノ振動と呼ばれます。電子ニュートリノというように特定のニュートリノに着目すると消滅・復元を繰り返すことになります。実際には、このニュートリノ振動の観測によって、ニュートリノには3種類の質量があり、それらが混合して各フレーバーのニュートリノが構成されていることが発見されました。カムランドは、原子力発電所からの反電子ニュートリノを観測することで、180kmという長距離で起こる量子力学的な現象であるニュートリノ振動を見事に観測しました。距離÷エネルギーという変換を適用することで、反電子ニュートリノが消滅・復元を繰り返しているのを2周期にわたってはっきりと捉えています。これにより太陽ニュートリノ問題を解明するとともに、ニュートリノの質量に関する情報(質量の2乗差)を2.8%という高精度で決定することに成功しました。

ニュートリノ地球物理の創出

ニュートリノの伝搬が解明されたことで、ニュートリノの透過性の高さを利用した不可視の天体内部観測が現実的なものとなりました。身近なはずの地球や太陽内部には未解明なことが山積しています。46億年前に隕石が集積して作られた地球が、その後どうのように現在の地球に発展したのか。そして、地震や地磁気生成などの現在の地球ダイナミクスはどうのように引き起こされているのか。これらを解明するには地熱の理解が非常に重要になります。地球内部に存在するウランやトリウムといった放射性物質はその崩壊によって熱を生成するとともに、反電子ニュートリノを放出します。カムランドはこれを観測することに成功しました。ニュートリノ観測が地球内部を直接的に観測する新しい手法を提供したことで「ニュートリノ地球物理」が創出されました。地球上の他の地域でも地球ニュートリノ観測が計画されており、これらとも連携した多地点観測により、ニュートリノによる詳細な地球内部の研究が進展すると期待されています。カムランドにおいても、ニュートリノの到来方向を検知するための研究開発が行われており、今後ますます発展していく研究分野であると考えています。

太陽組成問題への挑戦

太陽ニュートリノ問題の解決によって太陽の理解は相当進みました。特に、太陽表面震動を使って調べた陽震学による太陽内部の構造が、標準太陽模型の予測と見事に一致したため、標準太陽模型の信頼性は非常に高まっていました。標準太陽模型は、太陽形成時の組成を現在の表面組成で推定し、46億年の成長の後に現在の太陽が再現できるようにパラメータを調整することで構築されています。ところが、最新の表面組成の観測結果を用いると、陽震学で観測された構造を再現できないという「太陽組成問題」が、新たに生じてきました。この問題を検証するには太陽中心の炭素・窒素・酸素などの存在量を知ることができれば良く、これは太陽CNOサイクルニュートリノの観測によって実現できます。カムランドでは、液体シンチレータのさらなる純化、デッドタイムフリー電子回路の開発・導入により着々と観測の準備を進めています。

ニュートリノを伴わない二重β崩壊の探索

  ニュートリノ観測のために実現したカムランドの極低放射能環境は、希な現象を観測するのに最適です。この特徴を生かして現在「ニュートリノを伴わない二重β崩壊の探索」を計画しています。電荷を持たないニュートリノは粒子と反粒子の区別がない可能性があります。これをマヨラナニュートリノといい、ニュートリノが他の素粒子と比べて極端に軽いことを説明するシーソー模型の前提となっています。また、無から生じた宇宙に反物質が無く物質だけでできているという謎に対して、シーソー模型が予言する右巻きの重いニュートリノ崩壊が宇宙の物質優勢をもたらしたとするレプトジェネシスが注目されており、ニュートリノがマヨラナニュートリノであるかどうかは、素粒子大統一理論の構築や、なぜニュートリノだけが軽いのか、なぜビッグバン後の対消滅で物質が生き残ったのかなどの重要な問題に対して決定的な知見を与えると考えられています。ニュートリノを伴わない二重β崩壊は、ニュートリノがマヨラナニュートリノであることの証拠となると同時に、ニュートリノ振動では決定できないニュートリノ質量(有効質量)の絶対値を与えます。二重β崩壊は、2つのβ崩壊を同時に起こして原子番号が2つ隣の原子核に崩壊する過程ですが、通常のβ崩壊がエネルギー準位として許されない場合に観測可能になります。その際、2つのβ線と2つの反電子ニュートリノを放出するものは素粒子標準模型の範疇で起こる現象で、いくつかの原子核で観測されています。ニュートリノがマヨラナタイプで質量を持つ場合は、一方のβ崩壊で生成した反電子ニュートリノが電子ニュートリノとなり、もう一方で吸収される現象が可能となります。この現象が、ニュートリノを伴わない二重β崩壊です。その重要性から、世界中で多くの探索が行われてきましたが、Ge76を使った高分解能実験でニュートリノを伴わない二重β崩壊を発見したとする報告があります。しかし、その経緯やバックグラウンドの多い環境での測定であるため一般には受け入れられておらず、高感度の実験による検証が待たれています。カムランドは非常に低バックグラウンドの環境であることに加え、液体シンチレータには容易に二重β崩壊核であるXe136を溶かすことができます。これらの特徴を生かすことで、低コストで世界最高感度の探索を目指しています。 クリックすると公式ホームページが新規で開かれます。

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