(論文解説)

 カムランド実験では、遠方の原子炉から飛来する原子炉反ニュートリノを観測している。最初の結果では、約145日分のデータが用いられた。ニュートリノエネルギーが3.4 MeV以上の事象において、観測数は54個、ニュートリノが消失しない場合の予測数は87個であった。よって、観測数は予測数に比べて有意に少なく、99.95%の信頼度で原子炉反ニュートリノ消失を世界で初めて確認した。これまでの原子炉反ニュートリノ実験の結果を図(縦軸は観測数と予測数の比、横軸は原子炉からの距離)に示す。図の点線は、太陽ニュートリノ実験の結果を説明するニュートリノ振動が起きた場合の予測であり、カムランドの結果はまさに誤差の範囲内で一致している。これまでの原子炉を用いた実験では原子炉からの距離が高々1 kmまでであったが、カムランドは1,000トン規模の検出器を用いることで距離を一気に180 kmまで延長できたので、ニュートリノ振動の兆候をとらえることに成功した。他実験による太陽ニュートリノ観測と原子炉反ニュートリノ観測を統合すると、ニュートリノ振動の大混合角(LMA)解が唯一正しい解であることが示された。カムランドの結果によって、30年以上続いた「消えた太陽ニュートリノの謎」はついに解決に至った。

カムランドの最初の結果:原子炉反ニュートリノ消失の証拠

フィジカル・レビュー・レターズ 90巻 021802(2003年掲載)

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