(論文解説)

 この論文はカムランドによる原子炉反ニュートリノ観測の第2回目の結果であり、前回の約5倍に相当する766トン・年のデータが使われた。ニュートリノエネルギーが3.4 MeV以上の事象において、観測数は258個、ニュートリノが消失しない場合の予測数は365個であった。統計量の拡大により、ニュートリノ消失の有意性は99.998%の信頼度まで高められた。ニュートリノ振動を仮定した解析を行った場合、振動パラメータの最適値は、Δm2 = 7.9 × 10-5 eV2 となる。図の縦軸は観測数と予測数の比、横軸は原子炉からの距離をエネルギーで割ったものL/Eで表しており、ニュートリノ振動が起こっていればデータはサインカーブの形を描くことが期待される。実際に、図に示すようにニュートリノが減ったところから一度増えてまた減りさらに増えているところ(振動の約1周期)が観測された。さらに、振動の有意性を示すために、データを等確率幅で分けた20データを用いて統計検定(χ2検定)を行った結果、スペクトルの歪みは99.6%の信頼度で確かめられ、ニュートリノ振動の直接的な証拠を示すことに成功した。

カムランドによるニュートリノ振動の測定:スペクトルの歪みの証拠

フィジカル・レビュー・レターズ 94巻 081801(2005年掲載)

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