(論文解説)

 陽子崩壊などのバリオン数非保存の現象は、これまでカミオカンデをはじめとする多くの大型検出器によって探索されてきたが、未だ発見には至っていない。これまでの実験で、ほとんどの核子(陽子や中性子)崩壊モードに対して1030 年以上の長い寿命が得られているが、複数のニュートリノに崩壊するモードは検出が難しく、原子核内で起こる可能性のあるnn → 2ν などの不可視崩壊モードに対する下限値は1025 年程度であった。カムランド実験では、液体シンチレータの大発光量を活かして、原子核内での中性子の崩壊に続く二次粒子と原子核の放射性崩壊による信号の探索を行った。図に示すようなエネルギーと検出位置による信号の選定を行った結果、観測数は0個であった。このことから、nn → 2ν に対して、これまでの結果を10,000倍以上更新する1.4 × 1030 年以上の寿命が得られた。同様に、 n → 3ν に対しても、これまでの結果を約3倍更新する5.8 × 1029 年以上の寿命が得られた。

カムランドによる中性子の不可視崩壊モードの探索

フィジカル・レビュー・レターズ 96巻 101802(2006年掲載)

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