(論文解説)

 これまでの原子炉反ニュートリノの結果では、反ニュートリノの消失とエネルギースペクトルの歪みを示し、ニュートリノ振動の直接的な証拠を示した。今回は、データ統計量の増加(2,881トン・年)や系統誤差・解析手法の大幅な改善により測定精度が向上した。イベント選定条件は低エネルギーのデータを効率よく選べるように工夫され、反応しきい値以上の全エネルギーの原子炉ニュートリノが捕らえられるようになった。その結果、ニュートリノ振動の様子が2サイクルにわたってきれいに観測され、スペクトルの歪みの有意性は5σ(99.99994%)以上の信頼度となり、ニュートリノ振動が起きていることをより確実なものにした。振動パラメータ解析の結果を図に示す。振動パラメータの許容領域は太陽ニュートリノ実験で排除されているダークサイド(tan2θ12 > 1)の領域を除けば、 Δm212 = 7.58+0.14-0.13(stat)+0.15-0.15(syst) × 10-5 eV2, tan2θ12 = 0.56+0.10-0.07(stat)+0.10-0.06(syst) の領域のみに絞られたことが分かる(stat,systは統計誤差と系統誤差を表す)。カムランド実験が始まる以前、 Δm2 に対しては7桁もの不定性があったが、今や2.8%という高精度で測定されるに至った。

カムランドによるニュートリノ振動パラメータの精密測定

フィジカル・レビュー・レターズ 100巻 221803(2008年掲載)

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