(論文解説)

 最近の太陽・大気・原子炉・加速器からのニュートリノを用いた実験によって、2世代(種類)のニュートリノの混合については高精度の測定が可能となった。しかし、理論的には3世代のニュートリノの混合が起こる可能性が高いと考えられており、その混合の大きさは角度のパラメータ θ13で表わされる。この未知の混合を発見することは、ニュートリノ(レプトン)での物質・反物質 (CP) 非対称性を検証する上で非常に重要な鍵となる。今回、カムランド実験ではデータ量の増加(4,126トン・年)に加え液体シンチレータの純化作業によりノイズ事象を大幅に削減し、測定精度を向上することに成功した。さらに太陽ニュートリノ実験のデータと組み合わせた解析を行うことにより、3世代ニュートリノ振動パラメータは Δm212 = 7.50+0.19-0.20 × 10-5 eV2, tan2θ12 = 0.452+0.035-0.033, sin2θ13 = 0.020+0.016-0.016の領域に絞られる。この結果から得られた θ13 に対する制限は、カイ2乗検定の図に示すように(青実線)他のニュートリノ振動実験を組み合わせた最新の結果(緑点線)とほぼ同レベルの制限である。全ての実験を組み合わせた場合(赤実線) sin2θ13 = 0.009+0.013-0.007 となり(1)79%の信頼度で θ13 による3世代の混合があることを示している。この3世代混合の示唆は、次世代の加速器・原子炉ニュートリノ実験において、さらに厳密に検証されると期待されている。


(1) 加速器実験(MINOS)の最新結果(hep-ex/1006.0996v1)を含めた場合、以前の結果(hep-ex/0909.4996)ではsin2θ13 = 0.017+0.010-0.009 となる。

カムランドでの原子炉反ニュートリノを用いた3世代振動パラメータ解析による θ13 に対する制限

フィジカル・レビュー・D 83巻 052002(2011年掲載)

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