(論文解説)

 環境中の低エネルギー反ニュートリノ源としては、地球や原子炉内部での原子核反応が支配的であるが、それより高エネルギーでは宇宙起源反ニュートリノの寄与が重要である。特に、8 MeVから 15 MeVのエネルギー領域では過去の超新星爆発で発生した反ニュートリノの小さな寄与に加え、太陽磁場とニュートリノ磁気モーメントの相互作用による反ニュートリノへの転換 (RSFPモデル)、暗黒物質の対消滅などのエキゾチックな発生メカニズムによる反ニュートリノだけが観測される可能性がある。カムランド実験では 4,530トン・年のデータを用いて、高いエネルギー領域(8.3 MeV〜30.8 MeV)での反ニュートリノの探索を行った結果、25個の反ニュートリノ事象の候補を観測し、バックグラウンド事象の予測数(26.9 ± 5.7個)とよく一致することが示された。この結果から、太陽ニュートリノの反ニュートリノへの転換確率は90%の信頼度で 5.3 × 10-5 以下と見積もられ、RSFPモデルに対してこれまでで最も強い制限を与えた。転換確率とバックグラウンド事象数(大気ニュートリノ中性カレント反応)の許容領域を図に示す。また同時に、このエネルギー領域における過去の超新星爆発や暗黒物質の対消滅起源の反ニュートリノに対して最も厳しい上限値が得られた。

カムランドによる宇宙起源反ニュートリノの探索

アストロフィジカル・ジャーナル 745巻 193(2012年掲載)

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