修士論文発表会2016 蜂谷 尊彦
『KamLAND-Zen実験における
信号波形情報を用いた背景事象除去の研究』
修士課程2年 蜂谷 尊彦
論文概要
ニュートリノのマヨラナ性を検証するため、ニュートリノを伴わない二重β崩壊(0νββ)探索を行っているのがKamLAND-Zen実験です。私は0νββの擬似信号となる212Bi-212Po連続崩壊事象の除去について研究しました。
212Bi-212Poは天然の放射性不純物であるトリウムの娘核で、KamLAND-Zenのミニバルーンフィルムに僅かながら付着しています。KamLANDは約200 nsの間に収集した光信号を集めて「1事象」とみなしますが、212Poの半減期が300 nsと短いために、212Bi-212Poの連続した2事象を1事象とみなしてしまうことがあります。私はそのような事象を再度2事象に分離する解析プログラムを開発し、10 ns以上の時間差がある2事象を分離することに成功しました。その結果、0νββの擬似信号となる212Bi-212Po連続崩壊事象を従来の半分にすることができました。将来計画のKamLAND2-Zenでは検出器で取得できる光の量が増えるので、さらに短い時間差の2事象も分離できるようになることを期待しています。