KamLAND検出器アップグレード

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KamLAND2 検出器アップグレード 高性能光センサー(PMT)の導入 光を集めるミラーを設置 波長変換材を添加した液シン データ取得電気回路の改良 シンチレーションバルーン 外側検出器の改修 KamLAND2で探索する物理

高性能光センサー(PMT)の導入

PMT

 カムランド検出器の球形タンク内部にある液体シンチレータで二重ベータ崩壊やニュートリノ反応が起こると微弱な光が放出されます。カムランド2では光検出性能が高められた直径50 cmの高量子効率光センサー(PMT)を新たに導入することで、これらの現象をより高い感度で測定できるようになります。これまでの光センサーと比べると量子効率(光から電子への変換効率)が大きく向上し、信号増幅機構の改良によって光検出時間の精度が改善し有効受光径も拡大しました。球形タンク内面に一様に敷き詰められた約1,900個の光センサーを全て高量子効率光センサーに置き換えることで、光収集量は約1.9倍に増えることが期待されます。

光を集めるミラーを設置

集光ミラー

 カムランド禅実験の探索対象であるニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊と他のノイズ事象を区別するには、検出器がより多くの光をとらえることができるようにすることが有効と分かっています。そこで、カムランド2禅実験では、PMTにパラボラアンテナのような形状の集光ミラーを設置します。
 集光ミラーはPET樹脂にアルミを蒸着した特注品で、可能な限り多くの光を集められるように、コンピュータシミュレーションを駆使して形状を最適化しています。さらに、集光ミラーの先端には反射シートを取り付けてさらに多くの光を取り込むことで、PMT 1本あたりが検出できる光の量を2倍に増やします。

波長変換材を添加した液シン

液体シンチレータ

 カムランド2での2重β崩壊の実験(KamLAND2-禅)では、新たに波長変換剤を添加して、液体シンチレータの性能アップを計画しています。
 液体シンチレータは、放射線と反応すると発光する性質を持っています。この光はシンチレーション光と呼ばれます。このシンチレーション光を光電子増倍管で検出しています。KamLAND2-禅では、インナーバルーンを発光性のフィルム(PEN)を用いることで背景事象を見分けやすくする改良を行うのですが、このPENは、今までの液体シンチレータの光を吸収してしまいます。そのため、PENを用いた背景事象削減のためには、PENに吸収されないシンチレーション光が必要です。
 私たちは、波長変換剤と呼ばれる、光の波長を非常に効率良く、わずかに変換する薬品を添加することで、この問題を解決しようとしています。 波長変換剤は数々ありますが、KamLAND実験に適した性質の薬品の選定を行いました。選定では、高効率で光の波長を変換すること、変換の速度が速いこと、変換後の波長が適切であること、など総合的に判断を行いました。その結果、bis-MSBと呼ばれる波長変換剤を利用する予定です。現在では、このbis-MSBの中に含まれる、ウラン・トリウムといった天然に存在する放射性不純物の除去の開発・研究を行っています。カムランドの測定ターゲットである、ニュートリノは、幽霊粒子という別名があるほど、反応が稀な粒子です。天然の放射性不純物を極限まで削減する必要があります。したがって、このウラン・トリウムを超高感度で測定が可能となるよう、筑波大学と協力して装置の性能改善から取り組みました。これらの努力が実って、ニュートリノを世界一の感度で観測できるよう、研究・開発を行っています。

データ取得電気回路の改良

電気回路

 光電子増倍管からの信号は、電気的なパルスとして出力されます。この信号をコンピューターで解析するためには、コンピューターが扱えるデジタルデータへ変換する必要があります。その橋渡しを担うのが、電子回路システムです。
 私たちは、KamLAND2で用いる光電子増倍管の信号の大きさに最適化した信号処理機能と、1秒間に10億回の高速変換を行う電子回路システムを開発しました。このシステムにより、KamLANDで課題となっていた変換時の不感時間を低減し、さらにデータ転送速度の向上を実現します。
 KamLAND2では、この電子回路システムを用いることで、これまで十分に捉えられなかった宇宙線ミューオン事象に関連する粒子をより包括的に検出し、観測感度の向上を目指します。

シンチレーションバルーン

シンチレーションバルーン

 KamLAND禅実験では厚さ25マイクロメートルのナイロンで出来たミニバルーンの中にキセノンを溶かした液体シンチレータが満たされていて、そこで発生するニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊信号の観測を目指しています。このナイロン製ミニバルーンの素材中には、ごくわずか (1gあたり1兆分の3グラム以下という超微量) ですが、ウラン系列の放射性不純物が含まれています。このウラン系列に存在する放射性同位元素 (ビスマス214)は二重ベータ崩壊信号探索のノイズ信号を作り出します。
 ビスマス214のノイズ信号は直後 (164マイクロ秒)に起こるポロニウム214のアルファ崩壊の信号を検出することで判別・除去が可能ですが、ナイロンフィルム内でのポロニウム214のアルファ崩壊は観測することが出来ません。
 このノイズ信号を除去するために、KamLAND2禅実験ではミニバルーンの素材自体が光る「発光性フィルム」を用いることを計画しています。発光性フィルム内でのポロニウム214のアルファ崩壊はシンチレーション光を放出し、KamLAND2検出器の光電子増倍管で観測できます。これによりビスマス214のノイズ信号を判 別・除去することができ、二重ベータ崩壊信号の純度が向上します。KamLAND2禅実験でのミニバルーンに用いる発光性フィルムの素材として、ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いる予定です。現在はこのフィルムからミニバルーンを製作するための手法の確立や発光性能試験、フィルム中に含まれる放射性不純物量の分析など、検出器製作に必要な技術実証を進めています。

外側検出器の改修

外側検出器

 外水槽検出器は水で満たされるタンク(岩盤に防水コーティングを施したもの)と光センサーから構成されており、宇宙線事象の同定、外部からの背景事象の遮蔽、内部検出器の冷却という役割を持っています。改修前のカムランドでは外水槽から岩盤への水漏れが年々増加し、内部検出器の温度の安定性が下がって内部検出器の液体に対流が生じていました。このために比較的時間間隔の長い(数時間以上)連続事象の相関をとりにくくなったり、液体の格納容器(バルーン)の表面から生じた放射性不純物が検出器中心に流入してくるという問題がありました。
 今回のアップグレードでは外水槽の防水コーティングを上塗りし、前述の問題に対処します。上の写真は改修前の外水槽の様子で、光センサーが設置されており内装は光をよく拡散するために白い不織布で覆われています。下の写真は光センサーと不織布を取り除いて防水コーティングを実施したあとの様子です。これから光センサーと不識布を設置し直して上の写真の状態へ戻していきます。


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