1. 1989年冬 板橋区東武練馬駅駅前交番前
  2. 1990年秋 文京区後楽新目白通り
  3. 1991年夏 北区赤羽日の出通り
  4. 1994年秋 仙台中央郵便局前
  5. 1995年秋 広瀬川仲の瀬橋
  6. 1996年冬 広瀬川愛宕大橋
これらの話はフィクションです.

1989年冬 板橋区東武練馬駅駅前交番前

Now Writing

1991年秋 文京区後楽新目白通り

Now Writing

1992年秋 北区赤羽日の出通り

いつも通っている通学路.車道が上下1車線ずつ,ガードレールがあって, 幅2m弱の歩道.前の方にトラックが止まっていて,荷物の積みおろしを している.こういう時は,歩道に入った方がよい.

トラックは木材を積んでいた.止まっていたのは材木屋の前で, ちょうど大きな板をおろしているところだった. 一人が板を抱え,歩道を歩いている.板を持つ人とガードレールの間は 80cmといったところか.すり抜けられる幅ではあるが, それでは板を持っている人を驚かせてしまう.一応,控えめにベルをならし, 通るよと予告をした.つもりだった.

予測が甘かったと言ってしまえばそれまでであるが, なんとその人は板を抱えたまま大きく振り向いたのである. 板は歩道を塞いだ.そうされてはぶつかるしかないだろう. ガードレール側にぶつかっては,板を持っている人を巻き込んでしまう. 痛そうだけれど,仕方ない.反対側だ.

他の人からはどう見えたのだろう.急に進路を変え,材木屋の, 木材が積んであるところに突っ込んだ.この痛さは半端でない. 通常,事故というのは道路にたたきつけられるものと,昔から相場が決まっている. 木材は,路面ほど平坦でない.しかも,崩れ落ちてくる.

1994年秋 仙台中央郵便局前

痛い...痛すぎる...息が出来ない..胸を打ったか...
頭は..大丈夫らしい.左足と右腕,胸か...

人が集まってきている.早く起きなければ救急車を呼ばれてしまう. 事故の時くらいゆっくりさせて欲しいが,そうもいかない. 早く笑顔で立ち上がらなければ...

痛い..起きるぞ....おきるぞ..おきる...
起きた.相手は? 「大丈夫ですか ?」「ええ,私は.」
あれだけ譲歩したんだ.大丈夫に決まっている.

目が霞んできた.ここはまずい.早いところ立ち去ろう.
「私も全然大丈夫ですから.じゃあ,急いでますので,これで.」
近くに公園があった.そこのベンチがいいだろう.頭が痛い...
もうほとんど目が見えない.立っているのは限界だ. 意識が途切れ途切れになってきた.
1時15分か...

蟻に起こされた.寝耳に蟻である.まあ,これはいいや.
1時50分.30分で起きれたなら,まあまあと言ったところか.
熱も出てきたし,病院で検査を受けとくレベルかな?

1995年秋 広瀬川仲の瀬橋

なぜこんなに見通しの良いところで... と良くいわれる. 現場は,大きな橋の上.車通りも少なく,歩道も広い. ふつう,こんなところでは誰も事故を起こさない. 誰だってそう思っている.
でも実際事故が起きた.正確に言うと,橋の欄干に一人で激突した. 指の肉が少し削げ落ち,10時間以上血が止まらない.広瀬川で やっていたサークルの芋煮会に行く途中だったが,それどころではなくなってしまった.行ったけど.

理由はこうだ.自転車で走っていると,前から小学生の5〜6人の集団が 話をしながら歩いて来る.話に夢中になっているせいか,こっちには 全然気づかない.自分たちが歩道を完全に塞いでいることも全然認識 していない.しかしまだ距離がある.これだけ見通しがいい場所だから, そのうち気づくだろう,と思っていた.

まだ話に夢中になっている.そろそろ距離は 30m を切った. いい加減気づかないと危ない.

20m, 15m, ... まだ気づかない.いよいよ衝突の危険が現実になってくる. ちゃんと前を見て歩け,と心の中で叫ぶ.

10m を切った.5m,3m,もう避けきれない.不運なことに,車道には車が来ている...

集団の中の一人が言った.「今の見た? あの人,自分から壁に突っ込んでいったよ. しかも凄い勢いで.」

1996年冬 広瀬川愛宕大橋

周囲の人たちはあまりいい顔をしなかったのだが, 自動車の運転免許を取ることにした. 自動車の運転では常に危険予測というものが必要らしい. 「歩行者が飛び出してくるかもしれない」 「陰から車が出てくるかもしれない」 など.

ひどすぎる適性検査の結果を少しは反省し,自転車の運転にも 危険予測というものを取り入れることにした.
「側溝のふたが空いているかもしれない」 (陽子崩壊くらいの確率かな)
「横の車が巻き込みを確認しないかもしれない」 (これなら10:0だな)
「曲がったところに物が置いてあるかもしれない」 (そのとき考えよう)
「歩行者の死角から自転車が飛ばしてくるかもしれない」 (まあいいや)

予測があたった.相手は40km/h位で走っている.こっちも40km/h位だから 相対速度80km/h,横に歩行者がいるから,横には逃げられない.正面か... 痛いんだよな,あれ...と考えているうちに正面衝突した.

なんだ,予測能力はあるじゃないか.やっぱり適性検査は間違っていたんだ. しかし,それにしても,やはり正面衝突は痛い...
などとひたっている場合ではなかった. ふと,自分が車道に落ちていることに気づいた.早く逃げなくては危険だ. ひかれることはないにしても,急ブレーキを踏んで今夜の話のネタに されるにきまっている.それだけは避けたい...


Edited by: Enomoto Sanshiro
Last Modified: 31 Jul 2007