神岡·検出器について 5

さて、光電子増倍管から出てくる電気信号は、カムランド検出器の外にある、電子回路で一旦増幅され、最後にはコンピューターが読めるようなデジタル信号に変換されます。この変換を行う電子回路は、アメリカのバークレー研究所によって、素粒子実験にために開発された ATWD チップ( 波形情報を一旦保持しておいて、後でデジタル化する特殊なIC )を使用しています。これは、各光電子増倍管からの電気信号の波形を 1.5ナノ秒単位で記録する優れものです。

このおかげで、信号の情報を失うこと無く、後で質の良いデータ解析を行うことが出来ます。ただし、データ量が非常に多くなり、1日に 150ギガバイト程度(CD 250枚分)の膨大なデータ量を取り込むことになります。このデータ量は、光電子増倍管の数が10倍近くあるスーパーカミオカンデ実験のデータ量より多く、一般にデータ量の膨大になる高エネルギー物理実験の中でも有数のデータ量です。 この量のデータを神岡の実験場所から仙台の東北大学まで送るのには、ネットワークを通しておこなうことは出来ず、一旦テープに記録して、そのテープを宅急便で送っています。 高度な技術を利用しているカムランド実験装置でも最後の最後には、人の手を介する必要があるわけです。

さて、今迄、「世界で最大」とか「世界で一番」とかの表現がいろいろ出てきましたが、それには、理由があります。 世界でだれもやっていない新しい発見をするためには、世界一の性能をもつ実験装置で実験をやる必要があるからです。日本は、ニュートリノの研究で世界をリードしていますが、それは、このような優れた実験装置があることが、その理由の一つです。ニュートリノの研究は、今急激に発展しつつあります。東北大学ニュートリノ科学研究センターは、今後も優れた発想と技術で、ニュートリノ研究を進めてゆきたいと思っています。