研 究 紹 介

暗黒物質の探索

宇宙の暗黒物資

 夜空には、数多くの星や銀河が輝いています。これらは、私たちがよく知っている「物質」から構成されていますが、これら物質は宇宙の約5%程度に過ぎないことが分かってきました。宇宙には,宇宙を万有引力で支配する「暗黒物質」(約27%)と、宇宙空間を拡げようとする「暗黒エネルギー」(約68%)が存在しています。
 暗黒物質と暗黒エネルギー、どちらもその正体を解き明かすことが必要です。暗黒物質については、未知の素粒子だと考えられているため、実験的に直接にその素粒子を検出しようとする試みが全世界で進んでいます。

     

Darkmatter_1
2つの銀河が衝突したとき,重力によって観測される
「暗黒物質」が(青)とエックス線によって観測される
「物質」(赤)と分かれていることが分かる




暗黒物質アクシオン,暗黒物質暗黒光子の探索

 暗黒物質の候補は数多くありますが、有力な候補の1つがアクシオンです。アクシオンは暗黒物質問題を解決するだけでなく、原子核を結合する力(強い相互作用)の、ある深刻な問題解決する、いわば、「一石二鳥」の素粒子であるため,特に注目されています。
 暗黒物質アクシオン探索では、アクシオンが強磁場中で転換した非常に微弱な光を検出します。この信号光は、アクシオンの質量に対応して、数100メガヘルツから数100ギガヘルツのマイクロ波になります。ニュートリノ科学研究センターが保有する9T超伝導マグネットを用いて、2024年1月から、このアクシオン由来の電磁場信号を捉える実験を開始しました。アクシオンには様々なモデルがあり、最も有力とされるモデルのアクシオンを探索するには未だ感度が不足していますが、ニュートリノ科学研究センターでは、フォトニック結晶技術など物性物理学の技術を取り入れ、独自の共振空洞を開発・研究し、感度の向上を図っています。将来的には,超伝導量子センサーや、超高磁場マグネットなどの導入によって、より高感度のアクシオン暗黒物質探索を進めたいと考えています。
 アクシオンの他にも、暗黒光子と呼ばれる、超弦理論から予言される暗黒物質候補が存在します。この暗黒光子は、磁場がなくてもマイクロ波に転換する性質があります。暗黒光子は,アクシオンと比較すると注目度は低いですが、開発した共振器を用いて、室温、無磁場という容易な実験条件下で、理論的に予言された領域を探索することができます。こちらも暗黒物質2023年1月この暗黒物質暗黒光子の探索を行いました。
 暗黒物質の謎の解明に向け、このような研究を進めています。


❖ コンタクト
 岸本 康宏 (kisimoto_at_awa.tohoku.ac.jp)

Daekmatter_2
暗黒物質アクシオン探索装置