研究成果

博士・修士 論文発表会 2022
修士課程2年: 儀間 智美 (KamLAND)

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修士課程2年: 儀間 智美 (KamLAND)   発表:2022年1月31日

『KamLANDにおけるミューオン束識別と飛跡再構成の研究』

論文概要

KamLAND-Zen実験は136Xeのニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索を通じ、ニュートリノのマヨラナ性を検証する実験である。

現在、KamLAND-Zenの主要なバックグラウンドとして、宇宙線ミューオン起源の放射線原子核、中でも136Xeの破砕による長寿命核の崩壊がある。これらの原因となるのは主に宇宙線ミューオンである。KamLANDに到達するミューオンには、高エネルギーの宇宙線よって生成される“ミューオン束(Muon Bundle)”がおよそ10%含まれる。これらはほとんど平行な複数のミューオンであるが、一本のミューオンを仮定する従来の飛跡再構成手法では事象の距離相関を誤ってしまい、バックグラウンド除去に失敗してしまうことがある。

本研究では高速な画像処理技術を応用した複数のミューオンの同時検出と、より詳細なヒットタイミングのモデル化を用いた飛跡再構成を行う新たなミューオン飛跡再構成ツールの開発を行なった。

大気シャワーを含むミューオン生成からの詳細なフルシミュレーションを用いて本ツールの性能評価を行った結果では、初めてミューオン束のような複数のミューオンの識別に成功した。

また、再構成された飛跡の精度は、シングルミューオンに対して再構成で得られた入口・出口は実際の入口・出口からの距離が100cm以下の精度で再構成に成功し、従来の精度を20%以上上回る結果であった。

さらにミューオン束事象においても同程度の精度を確認し、従来の飛跡再構成の精度を大幅に向上させた。

今後はこのツールの実用化を行い、ミューオン由来のバックグラウンドのさらなる低減を実現することでKamLAND-Zen実験のさらなる精度向上を目指す。

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