研究成果

博士・修士 論文発表会 2022
修士課程2年: 後藤 杏奈 (KamLAND)

  • 研究成果

Goto1
修士課程2年: 後藤 杏奈 (KamLAND)   発表:2022年1月31日

『KamLAND2-Zen 実験の液体シンチレータに導入する最適な波長変換剤の選定と濃度決定』

論文概要

KamLAND-Zen実験では、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索によって、 ニュートリノのマヨラナ性検証に取り組んでいます。KamLAND検出器は液体シン チレータ検出器であり、シンチレーション光の信号を光電子増倍管(PMT)によっ て検出します。現状でも世界最高感度を達成していますが、未だニュートリノを 伴わない二重ベータ崩壊は見つかっていません。そこで、エネルギー分解能の向 上を目標とするKamLAND2-Zen実験が計画されています。

KamLAND2-Zen実験では、ミニバルーンをナイロンから発光性のポリエチレンナフ タレート(PEN)に変更することで、バックグラウンドを減少させることが期待さ れています。また、液体シンチレータ(LS)では光量の1.4倍を目標としています。 ここで、ミニバルーンが発光性PENに変更されることに伴い、LSの発光波長を長 波長側に移動させる必要があります。これは、LSの発光がPENに吸収されること を防ぐためです。そのため、LSに波長変換剤を導入することが必要です。

本研究では、LSに導入する波長変換剤の選定と濃度決定、さらにLSの成分変更を 行いました。発光量、発光波長等を評価し、KamLANDの波長変換剤としてbis-MSB が最適であると結論づけました。また、検出光量、放射線不純物含有量等を評価 し、bis-MSBの濃度は5 mg/Lが最適であると判断しました。bis-MSBに加え、プソ イドクメン(PC)をLSに追加することで、現在のKamLANDで使用されているLSの1. 28倍の検出光量を達成することができました。この新しいLSは、KamLAND2-Zen実 験での使用に向けて、プロトタイプ検出器で試験が進められています。


Goto2

Goto3