研究成果

博士・修士 論文発表会 2023
修士課程2年: 倉澤 真帆 (KamLAND)

  • 研究成果

Kurasawa1
修士課程2年: 倉澤 真帆 (KamLAND)   発表:2022年1月30日

『KamLAND2-Zen 実験のための、有機物に含まれる極微量放射性元素の高感度測定方法と純化方法の開発・研究』

論文概要

現在の宇宙は物質のみで構成されているが、宇宙初期は物質と反物質 が同数であったと考えられる。この物質優勢宇宙を説明する有力なシナリオでは、 ニュートリノは粒子と反粒子の区別がないマヨラナ粒子である必要がある。 KamLAND-Zen実験では、ニュートリノのマヨラナ性を検証するために、ニュート リノがマヨラナ粒子の場合にのみ起こり得るニュートリノを伴わない二重β崩壊 事象を探索している。世界最高感度での探索が続いているが、未だニュートリノ を伴わない二重β崩壊の信号は検出されていない。

そこで、KamLAND-Zen実験を改良することで実験感度向上を目指す、KamLAND2- Zen実験が計画されている。その改良案の一つに、検出器内部からの放射性物質 による背景事象の低減を目的とした、シンチレーションバルーン(ポリエチレン ナフタレート(PEN))と波長変換剤(Bis-MSB)の導入が挙げられる。これらの物質 にも極低放射能が要求されるため、有機物中の放射性元素の高感度な測定手法と、 KamLAND2-Zenで使用する部材の選定が必要である。

本研究では、1)有機物中の放射性元素(238U,232Th)の高感度測定の開発と、2)測 定によって有意な放射性不純物が確認された物質の純化手法の開発を行った。1) では、クリーン環境を整備し、乾式灰化と誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS) を組み合わせることで、pptレベルの測定に成功した。2)では、Bis-MSBの液々抽 出による純化の実験を行い、液々抽出によって波長変換剤としての性能が劣化し ないことを確認し、有機液体中の放射性元素濃度の測定手法を確立した。

Kurawasa2

Kurawasa3