博士 論文発表会 2025
修士課程2年: 松本 優也 (KamLAND)
- Mar. 03, 2025
- 研究成果
修士課程2年: 松本 優也 (KamLAND) 発表:2025年2月4日
論文タイトル:『KamLAND2に向けた新型フロントエンド電子回路のトリガー開発』
論文概要ニュートリノは素粒子の一種であり、現代のニュートリノ物理学においてこの ニュートリノがマヨラナ粒子であるかどうかが大きな研究課題となっている。こ の検証方法にはニュートリノを伴わない二重β崩壊の検出が考えられており、 136Xeを用いた探索がKamLAND-Zen実験によって行われていた。KamLAND-Zen実験 では主な背景事象にXeのニュートリノを伴う二重β崩壊による染み出しや宇宙線 ミューオンによるXe核破砕で生成された不安定核の崩壊、Xe容器における214Bi の崩壊があった。これらの背景事象の減少を目指し、光電子量の増加によってエ ネルギー分解能を向上したKamLAND2及びKamLAND2-Zen実験が計画されている。宇 宙線ミューオンによる不安定核の崩壊現象については中性子を検出することによ ってタグする手法が用いられる。KamLAND2ではトリガーシステムの刷新によって 中性子検出効率を改善し不安定核のタグ効率の向上が見込まれている。そのほか、 将来的なソフトウェアを用いたイベント検出機能の実装による背景事象の減少が 期待されている。
KamLAND2へ向けて開発の進むトリガーシステムに導入される新型フロントエン ド電子回路がMoGURA2である。MoGURA2はFPGAによる信号処理機能をもち、ここに 搭載するファームウェアについても開発が行われている。しかし、これまでの先 行研究により開発されたファームウェアはMoGURA2を1枚使用した単体系での動作 テストを目的としたものであり、トリガーシステムのような共通する基準クロッ クによって複数枚のMoGURA2を駆動する同期系での運用には対応していない。そ こで本研究はKamLAND2のトリガーシステムにおける運用を見越してMoGURA2を複 数枚用いた同期系による波形取得の実証を目的とした。
本研究ではトリガーインターフェースを新たに開発し、2枚のMoGURA2を用いた トリガーシステムによる同期性の検証を行なった。結果、同期系による波形取得 機能を確認することができた。こうして取得されたデータの検出時刻についてレ イテンシ差は同期精度の目標値を達成しなかったもののジッターについては目標 値を達成することを確認した。レイテンシ差についてはMoGURA2を一枚用いた単 体系においてタイルと呼ばれるADCの構成単位に新たに同期機能を使うことで目 標値を達成した。また、デジタイズレイテンシに対してオフセットを加える機能 の検証および試験を行い、KamKAND2においてPMTのケーブル遅延の補正に利用可 能であることを確認した。

