博士 論文発表会 2025
博士課程3年: 酒井 汰一 (KamLAND)
- Mar. 03, 2025
- 研究成果
博士課程3年: 酒井 汰一 (KamLAND)) 発表:2025年1月31日
論文タイトル:『Geoneutrino calorimetry in KamLAND with enhanced signal-background separation using GBDT』 (GBDTによりシグナルとバックグラウンドの分離を強化したKamLANDでの地球ニュートリノ熱量測定)
論文概要地球ニュートリノとは地球内部の238Uや232Thといった放射性物質から放出され る反電子ニュートリノである。これら放射性物質は崩壊する際にニュートリノと 共に熱を放出する。この放射性熱量は地球ダイナミクスの源であり、その量を推 定することは地球科学的に大きな意義を持ち、地球構造・進化の解明、地球の組 成の解明に必要不可欠である。KamLAND実験は、2005年に地球ニュートリノの世 界初観測を成し遂げ、現在も世界最高精度の観測を継続している。 地球ニュートリノ観測において、バックグラウンドの除去は非常に重要な課題の 一つである。 世界最大級のKamLAND検出器をもってしても、地球ニュートリノ は1event/monthほどの少数統計であり、地球ニュートリノイベントに比べて何桁 も多い検出器内放射性物質由来のバックグラウンド(アクシデンタルバックグラ ウンド)の除去は必須である。
私は新たなイベントセレクション手法として、機械学習を用いたイベント選定ツ ール、BDT-likelihoodを開発した。GBDT(Gradient Boosting Decision Tree)と は機械学習の一つである決定木のメソッドの一つであり、テーブルデータに最適 な手法である。BDT-likelihoodは、従来のlikelihood-selectionと同じようにイ ンプットパラメータからシグナル・バックグラウンドらしさを評価するスコアを 出力するツールであり、XGBoostメソッドをベースに作成されている。このツー ルを用いた結果、地球ニュートリノシグナルのefficiencyを8%増加させ、アクシ デンタルバックグラウンドを従来の60%にまで減少させることに成功した。
このツールを用いることで地球ニュートリノ解析の結果が大幅に改善され、より 精密なニュートリノフラックスと放射性熱量の測定が成し遂げられた。

