研究成果

博士 論文発表会 2026
博士課程3年: 永塚 穂里

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Eizuka front
博士課程3年: 永塚 穂里   発表:2026年1月27日

論文タイトル:『Search for astrophysical antineutrinos with deep neural-network-based event identification in the full KamLAND dataset』 (深層ニューラルネットワークでの事象識別を用いたKamLAND全データ期間における天体起源反ニュートリノ探索)

論文概要
1987年の超新星ニュートリノの初観測によって、ニュートリノを用いた天文学が 本格的に始動した。天体ニュートリノの起源は太陽、超新星爆発、暗黒物質など さまざまなものが挙げられており、その探索動機は多岐にわたる。特に近年注目 を集めるのは、過去の宇宙での超新星爆発で放出されたニュートリノの重ね合わ せとして定義される超新星背景ニュートリノである。超新星背景ニュートリノの 観測は詳細に理解されていない超新星爆発の典型的描像をニュートリノを用いて 得られることに意義がある。

1ktの液体シンチレータ検出器であるKamLANDは、その長い観測期間と10MeV以下 のニュートリノに対する高い感度から、天体ニュートリノ探索に適している。 KamLANDでは逆ベータ崩壊反応を遅延同時計測することで、反電子ニュートリノ を観測している。ここで、天体ニュートリノ探索の背景事象となるのは大気ニュ ートリノや高速中性子による事象が作る疑似的な逆ベータ崩壊反応であり、現在 の解析手法では除去することが困難である。

本研究では、信号と背景事象の反応粒子の違いが検出器内での発光位置・時間に 違いをもたらすことに着目し、光電子増倍管のヒット情報に現れる違いをニュー ラルネットワークを用いて識別する手法を開発した。超新星背景ニュートリノ探 索では有感時間6000日以上にわたるKamLANDの全データ期間を使用し、選定され た7事象のエネルギーと半径分布を用いたスペクトル解析を行った。その結果ニ ューラルネットワークの導入により、背景ニュートリノのフラックスに対する制 限を従来のKamLANDの制限の約半分の値に更新することができた。また、本研究 は10MeV付近で初めて超新星背景ニュートリノフラックスに対する探索感度が理 論予測と同程度に到達するという成果をあげた。