修士論文発表会 2026
修士課程2年: 小幡 捺
- Feb. 26, 2026
- 研究成果

修士課程2年: 小幡 捺 発表:2026年2月2日
論文タイトル:『KamLAND2実験に向けた大型低放射能バルーンの開発研究』
論文概要
太陽中心部での核融合反応により生成されるニュートリノは、物質と殆ど相互作用することなく地球まで到達するため、太陽内部の情報を直接的に伝える貴重な手段である。これまでの研究により、ニュートリノが飛行中にその種類を変えるニュートリノ振動が発見され、長年の謎であった太陽ニュートリノ問題が解決された。現在は太陽ニュートリノを精密測定することで物理パラメータを詳細に決定することが課題となっており、特に7Beのベータ崩壊によって生じる7Be太陽ニュートリノの測定は、太陽内部温度の精密測定であったり、太陽内部の重元素量を巡る太陽組成問題の解決の鍵となる。本研究ではこうした物理課題の解決に向け、観測の妨げとなる背景事象を低減するための評価と開発を行った。
神岡の地下に位置する液体シンチレータ検出器KamLANDは、これまでにも7Be太陽ニュートリノの観測で成果を上げてきた。現在は検出器をよりアップデートしたKamLAND2実験が予定されており、集光効率の向上などが見込まれているが、7Be太陽ニュートリノ観測の主要な背景事象となる210Biの削減や、40Kを削減して観測領域を広げるために、液体シンチレータを内包した直径13mの大型バルーンも再作製を行う予定である。
バルーン製作においては、製作工程中の塵埃付着を防ぐためのカバーフィルムを新たに導入し、それが溶着強度に影響しないことを確かめた。加えてカバーフィルムは吸湿を防ぐことも示した。またフィルムのスパークや埃の巻き込みを防ぐために高湿度環境で製作を行う予定だが、フィルムの吸湿性はその湿度に上限を与えないことが分かった。さらにバルーンの強度を最も高める高周波溶着の最適パラメータを決定した。またバルーンを支える支持紐については、低放射能化という観点から紐の素材と太さを見直し、要求強度を満たす最も低放射能な素材と太さを決定した。また本研究で減らした背景事象について、太陽ニュートリノ観測おける影響を評価し、測定に用いる体積の増大や観測誤差の削減が見込まれることが確認された。