博士 論文発表会 2026
博士課程3年: 橘 昂我
- Feb. 26, 2026
- 研究成果

博士課程3年: 橘 昂我 発表:2026年1月28日
論文タイトル:『Novel Search for Fermionic Dark Matter via Xe Charged-Current Reactions in KamLAND-Zen』 (KamLAND-ZenにおけるXe荷電カレント反応を用いたフェルミオン暗黒物質探索)
論文概要
重力レンズ効果や宇宙マイクロ波背景放射(CMB)などの複数の観測は、暗黒物質(DM)が宇宙の全エネルギー密度のおよそ30%を占めることを示しているが、その粒子起源は依然として不明である。最も広く研究されてきたDM候補はWeakly Interacting Massive Particles(WIMP)であるものの、直接探索・間接探索・加速器実験のいずれにおいても決定的な信号は得られていない。この状況を背景に、軽いDMへの関心が近年高まっている。その候補の一つとして、原子核に対するフェルミオン暗黒物質(FDM)の荷電カレント(CC)吸収、すなわち136XeにおけるXeCC反応が、軽いDMを探索する新たなチャネルとして提案されている。
XeCC反応の重要な特徴は、反跳電子に加え、励起核136Cs* のアイソマー状態(寿命は数百ナノ秒)からの脱励起ガンマ線が、特徴的な複数パルス構造を形成する点にある。本研究では、岐阜県神岡鉱山地下に設置されたKamLAND検出器を用いて実施されているKamLAND-Zen実験において、KamLAND-Zen 800の全期間データを用い、反跳電子に加えてアイソマー状態からの時間相関した脱励起γ線を利用する遅延同時計測手法を初めて導入する。
質量1.3–2.4 MeVの範囲に対してFDM吸収断面積の90%信頼水準の上限を導出し、質量1.3–1.6MeVの範囲で最も強い制限を与えた。
さらに、次世代のKamLAND2-Zen実験における将来感度を評価した。モンテカルロシミュレーションにより、事象窓の拡張と発光量の増加は複数パルス事象の検出効率を大きく改善し、拡大した有効体積と相まって、現行のKamLAND-Zenと比較して吸収断面積に対する感度を約190倍向上させることが示された。これらの結果は、将来の測定が現行のLHCによる制限を超えるパラメータ領域に到達し得ることを示唆する。以上より、本研究はXeCC反応に対する遅延同時計測を用いたMeVスケールのFDM探索を初めて実証し、軽いDM探索に向けた新たな実験手法を確立した。