研究成果

博士・修士 論文発表会 2021
修士課程2年: 三本杉 洸斗 (KamLAND所属)

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Sanbonsugi
修士課程2年: 三本杉 洸斗 (KamLAND所属)   発表:2021年2月2日

『KamLAND2-Zen実験に向けた集光ミラーの形状最適化』

論文概要

我々が行っているKamLAND-Zen実験では、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊という未発見の物理事象の探索を行っています。実験に用いているKamLAND検出器は、二重ベータ崩壊などの物理事象が起こると液体シンチレータが発光し、それを囲む約1900本の光電子増倍管(PMT)が、その光を検出するという原理になっています。

現在、この実験では、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索に対して検出精度が不十分という課題があります。その要因の一つが、PMT間のスペースによって集光効率が悪くなっていることが挙げられます。KamLAND検出器のPMTは、それぞれが間隔を空けて設置されているので、液体シンチレータの発光の一部がその間に入ってしまい、検出の精度が低くなっています。そこで、集光ミラーという表面が鏡になっている装置の開発が進められています。集光ミラーを各PMTに装着することで、PMT同士の間に入射する光を鏡で反射させPMTに集光させることができ、検出精度の改善に繋がります。

本研究では、その集光ミラーの形状の最適化を行いました。KamLAND検出器を再現したシミュレーションツールを用いて、集光ミラーを装着した時の集光効率の評価を多数の形状で行うことで、最も性能の良いと思われる形状を求めることができます。本研究では、その最適化の結果、集光効率を約2.3倍に向上することができる集光ミラーの形状を求めることができました。将来、この集光ミラーを導入することで、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の発見に近ずくことが期待されています。