研究成果

博士・修士 論文発表会 2021
修士課程2年: 氏家 亮祐 (JSNS2所属)

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修士課程2年: 氏家 亮祐 (JSNS2所属)   発表:2021年2月1日

『J-PARC MLF施設におけるステライル ニュートリノ探索実験 JSNS2のための液漏れ監視システムの開発および 1MW 運転時の背景事象の研究』

論文概要

現在、ニュートリノは電子ニュートリノ νe、ミューニュートリノ νµ、タウ ニュートリノ ντ の3種類確認されている。これら3つのニュートリノの フレーバー固有状態は、質量固有状態の重ね合わせの状態となっており、 フレーバー固有状態の各世代間で振動をする。この振動のパラメータである質量三乗差 ∆m2 は、過去に行われたニュートリノ振動実験により計測されており、最も大きい値でも ∆m2 ∼ 10−3eV 2 とされている。しかし、LSND 実験や MiniBooNE 実験により、∆m2 ∼ 1eV 2 に相当する振動を報告された。この質量三乗差の値は、現在確認されている3種類の質量固 有状態では説明ができず、3種類の質量固有状態に比べて、重い4種類目の質量固有状態が混合しているステライルニュートリノの存在が示峻され ている。しかし、ステライルニュートリノの存在の有無は未だに決着がついておらず、現在、世界でもLSND実験やMiniBooNE 実験の結果を確認 するための実験が計画されている。JSNS2実験グループでは、J-PARCのMLF(Materials and Life Science Experimental Facility) でのステライルニュートリノ探索実験を行っている。JSNS2実験では、LSND 実験と同じ µ+ の静止崩壊による ν¯µ を用いて、同じ振動モードの ν¯µ → ν¯e の振動を観測する。

JSNS2実験グループでは、ニュートリノ検出のために、約50トンの液体シンチレータを用いる。この液体シンチレータの溶媒であるリニアアルキルベンゼンは、日本の消防法において危険物とされている。そのため、約50 トンの液体シンチレータを使用するJSNSJSNS2実験では、液体シンチレー タが漏れた場合に警報を発するシステムが必要であった。そこで、本研究で検出器からの液体シンチレータの漏れを監視・検出するシステムの開発を行い、検出器へのシステムの導入を行った。

また、JSNS2実験ではニュートリノ検出のために、遅延同時計測を行う。この遅延同時計測の Accidental 背景事象となる事象に、MLF のビームに 由来するγ線が存在する。また、JSNS2実験は MLF のビーム出力を1MWと仮定してデザインされた実験であるが、現在は J-PARC MLF のビー ム出力は0.6MWで運転されている。しかし、2020/6/25 から 2020/6/27 の間にビーム出力を0.9MWに上げて運転するトライアル期間があった。 そのため、本研究では、プラスチックシンチレータを用いて、各ビーム出力における、ビームに由来するγ線の量を見積もり、JSNS2実験における S/N 比の寄与を考察した。